マンションの間取りはライフスタイルの変化とともに、時代ごとに変化してきました。
現代を生きる皆様が、築年数の古いマンションを購入した時や、親世代から住み続けたマンションの間取りが「古い」「合わない」「変えたい」と思うことは必然です。

そんなマンションの間取り変更(リノベーション)ですが、マンションのような集合住宅で自由に間取りを変更することは可能なのでしょうか?

時代ごとのマンションの間取りの変化

戦後の日本では、戦災で住宅を焼失してしまったり、外地からの引き揚げで帰ってきた住民の住宅が不足しており、厳しい住宅難が発生していました。
この問題を解決するために大規模な団地が各地に建設され、この団地に取り入れられた間取りが「公営住宅標準設計C型(51C型)」と呼ばれる間取りです。

公営住宅標準設計C型(51C型)

この公営住宅標準設計C型(51C型)の特徴として、“食寝分離”と“就寝分離”の2つの概念を取り入れた構成になっています。

食寝分離は1942年に建築学者の西山夘三氏が提唱した考え方です。
昔の日本住宅の床は畳が基本であり、机はちゃぶ台、寝具は布団でした。
そのため同じ部屋で、食事する時はちゃぶ台を置き、寝る時にはちゃぶ台を片づけて、布団を敷いて生活していました。
そこで「食事空間と就寝空間を分離しましょう」という考え方をしたのが食寝分離です。

就寝分離は「親と子どもの就寝空間を分離しましょう」という考え方です。
戦後当時は子どもの勉強はちゃぶ台で行い、寝る時も両親と一緒に布団を広げて川の字で寝るスタイルでした。
このような生活スタイルでは、子どものプライベートな空間や時間を確保することが難しかったため、就寝分離が提唱されました。

この公営住宅標準設計C型(51C型)では食寝分離のために、ダイニングキッチン(DK)が導入されています。
そして、就寝分離のために、寝室として使える部屋が2つ備えられていることになるので、2DKなどになるでしょう。
この時はまだ銭湯に行くのが当たり前の時代なので、バスルームはありません。

間取りの中央にLDKを備えた3LDKの普及

1970年代には1世帯の平均人数が3人以上となっており、2DKでは手狭となってしまうため、居室を1部屋増やし、リビングを備えた3LDKが普及し始めます。
当時はまだ和室が生活の中心であったことから、和室が光を取り入れやすいよう窓際に配置され、LDKが間取りの中央に配置された中LDKのレイアウトが普及しました。

1980年代には現在の間取りにも通じるレイアウトが登場

1980年代には、玄関から廊下、リビングダイニングが一直線につながった縦長リビングダイニングレイアウトや、テラス側の窓際を全てリビングダイニングにした横長リビングダイニングレイアウトなどが登場しています。
バブルに沸く日本ではプライバシーを重視したPP分離型やライトコート、ワイドスパンが登場します。

PP分離型というのはパブリック空間とプライベート空間を導線上分離するレイアウトのことです。
ライトコートは廊下や洗面所、浴室等の電球で明り取りすることの多い空間で、採光や通気のために窓を採用したプランです。

PP分離

ワイドスパン

マンションの間取りは自由に変更できるか

さて、本題のマンションの間取り変更ですが、マンションの構造は大きく分けて2種類あります。

  1. ラーメン構造
    建物を柱や梁で支える構造です。ビルやマンション、一戸建てなどに広く採用されています。
    建物を支えているのが柱や梁なので、壁を取り払ったり、別の場所に壁を作ったりすることが比較的容易にできます。
  2. 壁式構造
    主に5階建て以下のマンションで採用される構造で、建物を壁で支える構造になります。
    建物を耐力壁で支えているため、間取り変更のために撤去したい壁が耐力壁だった場合には建物の強度に影響するため、取り払うことができません。

管理組合の規約を確認しておきましょう

また、管理組合などのルールで、リフォームに制限がかかることがあるため、管理規約をよく確認しておく必要があります。
リフォーム出来る範囲が決まっていたり、間取りの変更が禁止されていたり、水回り設備の移設が禁止されている場合もあります。

追加費用が発生する場合も・・・

リフォーム工事前には、きちんと設計し予算を計算しますが、築年数の古いマンションの場合、図面が十分では無かったり、いざ着工して壁を取り除いてみると、図面にない物が出てきたり、想定外の段差があって、ダクトや配管を迂回させなければいけない場合などがあります。
そのような場合、部材を追加で使う必要があったり、工期自体が伸びることがあり、追加費用が発生してしまうことがあります。

キッチンやバスルーム、トイレなどの水回り設備の変更は難しい

水回り設備の移設には配管がついてきますので、管を通す十分な空間を確保できないような構造(床コンクリートに直接フローリング等の仕上げ材を貼り付ける“直床構造”等)の場合は移設が難しいとされています。
そんな水回り設備の移設やマンションの間取り変更など、お困りごとがありましたら、長年の経験豊富なライフアシスト中央にご相談ください。